野村不動産グループCOOに聞くサステナビリティ【後編】 

「野村不動産グループCOOに聞くサステナビリティ【前編】」では、野村不動産のこれまでの軌跡が当社グループのサステナビリティの考え方にどのようにつながり、各地のプロジェクトに反映されているか、野村不動産代表取締役社長で野村不動産ホールディングスCOOの松尾さんに聞きました。インタビュー後編では、野村不動産グループが挑むサステナビリティにも関わる大型プロジェクトである「BLUE FRONT SHIBAURA」と、「森を、つなぐ」東京プロジェクトに込めた想いを語ってもらいました。

グループ一体でのサステナビリティ推進を

「BLUE FRONT SHIBAURA」では、浜松町ビルディング(東京都港区芝浦)の建て替え事業として、オフィス・ホテル・商業施設・住宅等などの複合的なツインタワーが建設されることになっています。2025年2月に一部竣工、2030年に街開きを迎える同プロジェクトでは、再生可能エネルギーの導入や資源の再利用といったサーキュラーデザインとともに、ウェルネスオフィス認証などサステナビリティにつながるさまざまな取り組みを進めています。

-「BLUE FRONT SHIBAURA」は、野村不動産グループによるこれまでのサステナビリティに関わる取り組みの象徴的な拠点となっていくのではないかと思われます。グループ本社もこちらに移転しますが、どのような期待をしていますか。

「BLUE FRONT SHIBAURA」への本社移転プロジェクトは、野村不動産グループの今後の価値創造を下支えするものとして大いに期待を寄せられています。さまざまなエッセンスが詰まっていますが、もっとも大きいのはグループ各社も含めた移転、集約を通じて、働き方を変えていこうとしていることです。コロナ禍を経てオフィスそのものの位置づけが変わりつつある中で、当社らしい働き方を体現すべく知恵を絞っているところです。

芝浦のオフィスフロアは、現在の本社ビル(新宿野村ビル)に比べて面積が4倍になります。執務スペースを中心に、部門間で気軽に打ち合わせができるようなシェアスペースを作りました。また、フロア間に内部階段を複数設けて、上下階の他部署、個社を含む他部門とのコミュニケーションを促進できるような仕掛けも取り入れています。

当社は、同業他社に比べてグループ会社間の連携を強く意識しています。1社だけで事業を行うのではなく、物件の仲介から管理に至るまでグループ企業集団として行っています。芝浦への移転、集約を経てグループ連携がさらに進み、グループ間の活発なコミュニケーションの延長線上に新たな発想やまだ見ぬ事業が生まれることに期待しています。

奥多摩の森を舞台に、手触り感のある挑戦を

野村不動産グループのサステナビリティにとってもう一つ大きなプロジェクトが、東京都奥多摩町で始めた都市と山間部との新しい経済循環の創出を目指す『「森を、つなぐ」東京プロジェクト 』です。今期から「つなぐ森タスクフォース」が発足し、松尾さん自らも参加、活動しています。

―プロジェクト立ち上げの狙いとともに、プロジェクトを通じて成し遂げたいことは何でしょうか。

「この森で何をするの?」と私が尋ねたところから始まり、色々と話を聞いていくうちに、この東京・奥多摩の森ならではの価値が生み出せるのではないかと可能性を感じました。

この山林は非常に急峻で、間伐して、木材加工するといった形で活用するのが難しいため、短期的な事業性を見出せる土地(森)ではないと考えています。だからこそ、すぐに成果につながることを期待するというより、このプロジェクトを通じて、グループ社員の皆さんにサステナビリティの大切さを認識してもらうことを手触り感のある体験のなかから感じていただくことが重要だと考えています。

東京で展開しているというのも意義のあることだと思います。新宿や芝浦からも日帰りで行ける距離なので、ぜひグループ社員の皆さんには小さくても手触り感のあることを色々と試してみて、何かヒントを得てほしいですね。奥多摩へリモートワークをしに行くのも良いですし、多様な人たちが地域にいる環境で、木材の再利用だったり、生物多様性について考えたりする良い機会が提供できる場だと考えています。

奥多摩も日本各地と同じように過疎が進んでいますが、観光資源がないわけではありません。当社だけで何かやろうとせず、共創できる企業と一緒に取り組んでいく。そんな新たな価値を生むアイデアが生まれていく場所になればいいなと思います。

野村不動産株式会社に入社した新人社員向けの「つなぐ森」でのフィールドワーク研修の様子。詳しいレポートはこちら

-野村不動産グループは今後も、国内外で多彩な事業を展開していくことになります。グループ一体としてサステナビリティを推進していくに当たっての意気込みや、社員の方々への期待を聞かせてください。

正直、期待を伝えるなんておこがましいですが(笑)みなさんも縁あって当社に入社して、さまざまな課題に接していく中で、どのように会社をサステナブルに成長させていくか、それぞれが考えを持っているはずです。それを「つなぐ森」のような場所で肌で感じたことやそれぞれの視点で考え、社会のニーズとつなぎ合わせ、アイデアを形にしてもらいたいと考えています。

私たち経営陣はその環境整備を担いますが、是非、社員の皆さんにおいては自ら感じ、考え、発案したことから「つなぐ森」のような第二・第三のサステナビリティに資する取り組みが次々と生み出されていくことを期待しています。そのためにも、芝浦の新たな拠点もうまく活用しながら、若手も中堅もベテランも、お互いに考えをぶつけ合いながら進めていってもらえたら嬉しいですね。