地球の生き物も大事なステークホルダー!野村不動産グループCEOに聞くサステナビリティ・前編

「みんつな」プロジェクトのBLOG第1弾となる「合言葉は「みんなで、つなぐ!」野村不動産グループのサステナプロジェクト、始動!」では、野村不動産グループのCEOであり、サステナビリティ委員長を務める新井聡からのメッセージもご紹介しました。そんな新井のサステナビリティにかける思いをさらに深掘りするべく、今年度からサステナビリティ推進部に配属となった入社4年目の松原が突撃インタビュー。その様子を前編・後編にわたりお届けしていきます!

お話を聞いた方
野村不動産ホールディングス グループCEO 新井聡

大学卒業後の1988年に野村證券株式会社に入社、2022年の同社退任時は営業部門担当副社長。同年に野村不動産ホールディングスに入社、2023年より野村不動産ホールディングス株式会社 代表取締役社長・グループCEO 兼 サステナビリティ委員長。愛知県出身。学生時代は剣道部に在籍。最近はほぼ毎晩のお酒と月に3~4回のゴルフを楽しむ。

松原にとっては、今回が人生初のインタビュー。そしてその相手がまさかのCEOということで、開始時間が近づくにつれて緊張感も増していきますが…。

新井は現場に入ると「これ、持ち上げて写真撮ってみる?」と大きな地球儀を指差してニヤリ。冗談を交えた会話をきっかけにリラックスした状態でインタビューが始まりました。(以降、聞き手松原)

ー本日はよろしくお願いします!CEO、そしてサステナ委員長に就任されて1年ですが、振り返ってみていかがですか?

歳をとると時間が過ぎるのが早く、「もう1年も経ったのか…!」というのが正直な実感です。これまでは、野村證券で証券業界に30年以上も身を置いていたこともあり、不動産業界で見聞きすることは新鮮で刺激的です。そういった環境の中で充実した日々を過ごしているので、時が過ぎるのがあっという間に感じられるのかもしれません。

一方で、この1年のCEOとしての取り組みを振り返ると「まだまだ足りない」「もっとスピード感をもって取り組まなければならない」と感じています。サステナビリティ委員長として気を配るべき領域においても、社会情勢や地球環境の変化のスピードは凄まじく、次から次へと新しい課題が生まれていますし、それに対応するための技術や考え方も進化しています。正直に申し上げると今の当社グループはサステナビリティに関して世の中の変化を追いかけている状況ですが、むしろ変化を先取りし、自らチャンスを生み出せるよう目指していきたいと思います。

ー私たちが思う以上に、サステナビリティ領域での変化のスピードは速いのですね。サステナビリティに向き合う中で、新井さんが常々考えられていることや気づいたことがあれば聞かせてください。

常々「サステナビリティの本質とは何か?」と考え続けているのですが、当社グループが掲げるサステナビリティポリシーやマテリアリティ課題に真摯に取り組むことはもちろん、私が思うサステナビリティは「想いを馳せられるステークホルダーをより広く捉えること」に尽きるような気がしています。

お客様・従業員・株主といった、直接的に接点がある方々に加えて、地球やそこに存在する生き物や資源、あるいは世界のあらゆる人々など直接的ではないステークホルダーも含めて、多くのステークホルダーを豊かに、そして幸せにすることを意識し、行動することが、サステナビリティの実現につながると考えています。

ステークホルダーを捉える視野を広げることができれば、当然、当社グループが提供するサービスの幅が広がるとともに、企業として広く社会に求められることにつながるのではと考えています。

ー生き物や資源もステークホルダーと捉えるのは新鮮ですね。そう思うようになったきっかけがあったのでしょうか?

奥多摩にある、当社の「つなぐ森」に行ったときのことでした。そこには様々な植物や動物たちがいます。そこで彼らがお互いに支え合い、そしてその森の豊かさに私たちも支えられているということを改めて感じました。また、ちょうどその頃に『資本主義の次に来る世界(原題:『Less is More』)』という本を読んだこともきっかけになりました。(この本の内容の全てに迎合するわけではないですが、)この本を読んで思考を重ねるなかで、すでに多くの皆さんがお気づきのことにたどりつきました。それは、企業において、サステナビリティ(持続可能性)とは、「必要とされ、存在しつづけていくこと」だということです。

私たちが森の恵みを必要とする一方で、森は私たち人間による手入れや整備が必要です。また、自分にとって家族や仲間が必要なのであれば、自分も相手から必要とされなければ関係は長続きしません。では、企業はどうかという視点でいくと、ビジネスやサービスを通じて、世の中から必要とされなければ成立しないわけですから、常に「私たちは、どれだけ多くのステークホルダーから必要とされているのか?」ということを問い続けないといけないと考えています。

つなぐ森でテレビ番組の撮影をされたときの様子(町長へのご挨拶前なので、スーツとスニーカーという恥ずかしい姿)

ー「必要とされるという意識」がポイントなのですね。野村不動産グループのサステナビリティポリシーでは「Earth Pride 地球を、つなぐ」を掲げていますが、そこに込められた想いについて教えていただけますか?

ここまでお話ししてきたように、ステークホルダーの捉え方が変わると、「お客様に優れた商品・サービスを提供すること」や「従業員のエンゲージメントを高めること」、「株主が満足する還元をすること」と並んで、「豊かなこの地球を次の世代へつないでいく」ということはごく当たり前のことに思えてきます。

そう考えると、当社グループのサステナビリティポリシーで掲げている「人間らしさ」「自然との共生」「共に創る未来」は、もはや「ありたい姿」ではなく、「そうなっていなければならない姿」であって、そうなれないのであれば、当社グループは世の中から必要とされなくなり、存在し続けられなくなるでしょう。一方で、このサステナビリティポリシーを日々の仕事や生活の中で自分ごとにするのは簡単なことではなく、常に私たち一人一人が「そうなるべきだ」と意識し続けないと実現できないものです。

サステナビリティポリシー「Earth Pride 地球を、つなぐ」

ー社会や環境の変化が急速な中で、サステナブルな社会を実現するための野村不動産グループの役割をどのように捉えていますか?

地球温暖化、気候変動をはじめとする深刻な環境問題、そして、社会が複雑化する中での紛争など、目の前で起きている事象を見ると、むしろ1980年代以降の40年間で私たちを取り巻く環境や事態は悪化しているように私には見えます。そして、この状況を改善することができないまま時間が過ぎれば、近い将来、私たちの周りでも今まで以上の危機的状況が起こってくるに違いありません。ですから、良い方向への大きな変化を起こすためには、国際機関や政府の取り組みに頼るばかりでなく、企業や個人それぞれの取り組みを強化していくことが不可欠です。

例えば、環境問題については、もしこれまでと同様の取り組みを継続して、地球とその資源や多くの生物が失われていくと、企業の活動基盤である地球環境そのものが維持されないことになりますよね。だからこそ、当社グループとしてはお客様、お取引先、株主、従業員に加えて、地球とその資源や生物もステークホルダーに含め、そこに貢献していく役割があると捉えています。

ー「自然は大事だから守ろう」ではなく、今起きている変化に私たちのビジネスや暮らしがどのような影響を受けるのか、そして私たちの行動がどう影響を与えうるか常に意識することが大切なのですね。

その通りで、今起こっていることは、過去の世代や過去の私たち自身が行ってきたことの結果ですし、今の私たちの行動も将来の状況を決めていきます。次の世代や子孫が豊かに過ごすことができるように、これからもステークホルダーであり続ける地球や生き物のことを守っていかなければいけない、ということは明らかです。

そして、当社のサステナビリティポリシーでは「人間らしさ」「自然との共生」「共に創る未来」をキーワードとしていますが、ポリシーを実現していくためにも、私自身は個人的に「人間は特別な存在である」という考えを捨て去り、「人間の存在意義や人の幸せとは何かを問い続ける」姿勢を大事にするつもりです。

ここまで、「Earth Pride 地球をつなぐ」という言葉をどのように捉えていくのか、新井のサステナビリティ観について聞きながらその本質を紐解いてきました。インタビュー後編では、幼少期のエピソードにも触れながら、「ステークホルダーを地球や生き物にまで広げて捉えるための考え方のヒント」や、サステナビリティの複雑な課題に向き合っていくための視点についてお話を聞いていきます。後編もお楽しみに!