「わたしたち」の小さな一歩が未来を大きく変える。オフィス内で出来る身近なサステナ実践とは?(野村不動産投資顧問インタビュー・後編)

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「みんなで、つなぐ!」編集部では、サステナビリティに取り組む野村不動産グループの社員へのインタビューを実施しています。

前編では、野村不動産投資顧問社がサステナ方針に込めた想いやその策定プロセスについてのお話をお届けしました。後編となる今回では、企画部業務課の松田さんと遠藤さんに、役職員が職場で取り組むサステナブルアクションのための仕組みづくりについてお話を伺いました。前編でお話を聞いた小木さん・一條さんにも、現場でそれを体験している社員としての意見を聞いてみました!

「ごく普通のこと」を5年、10年先まで続けていく

―オフィス内などの身近なところでは、どういったサステナブルな取り組みが行われているのでしょうか?

松田:昨年(2023年)10月のある日、片山社長から我々総務部門に「外交に行くと脱プラを意識して来客用飲料を紙パックにしている会社を見るようになった。当社も今のペットボトルから紙パックにしてはどうか。」という問いかけがあり、それをきっかけに切り替えを進めていました。

その後、サステナビリティ方針を見直す全社横断プロジェクトの中で役員から「ファンド事業でサステナビリティを推進している運用会社としては、役職員が自らも職場でSDGsを意識しなければならない」との意見が出され、オフィス内のSDGsがサステナビリティ推進プロジェクトのひとつとして位置づけられることになりました。

確かにサステナビリティ方針ができ、事業としては社会や不動産投資市場への好循環を目指した取り組みが進められていましたが、オフィス内ではまだサステナブルな取り組みはほとんどしていなかったんです。

野村不動産投資顧問株式会社 企画部業務課の松田さんの画像
野村不動産投資顧問株式会社 企画部業務課の松田さん

そこで、総務部門のメンバー4人で具体的な施策を考えることになり、アイデアは20個超出たのですが、やることになる役職員の気持ちになって考えればハードルを上げすぎないことが重要だよね、という結論に至り、「働く一人ひとりが共感できること」、「ちょっとした努力や我慢でできること」、そして「自宅や学校でやっているごく普通のこと」という3つのポイントで施策を絞りました。

SDGsは、新入社員から役員まで全員が、5年、10年先までやめずに続けられなければなりません。だから、最初はできるだけ簡単な、でも、かけがえのない地球にとって大事なことを「私達の10の宣言」と打ち出しました。

「私達の10の宣言」電気を再生可能エネルギーに、ゴミ分別強化でリサイクルに貢献、会社ではエコバッグを使用、来客用飲料の脱プラスチック、ペーパーレスを促進、文房具等をエコ商品に、節電①こまめな消灯、節電②空調温度の設定、検索エンジンを使って植樹に貢献、不要什器はできる限りリユース

松田:この10個の取り組みは全社集会でお披露目したのですが、その際には効果を身近な数字に置き換えることで、ちょっとした手間や面倒も無駄ではないんだなと感じてもらえるようにしました。他にも「1年間で使うコピー用紙(30万枚)は積み上げると私たちが働いているビルと同じ高さになる」「空調の設定温度を1℃抑えると消費電力を10~15%削減できる」といったものがあり、取り組みの意味や効果を身近に感じてもらえるよう工夫しました。

宣言に対する実際の効果を説明した画像

―役職員を巻き込んだサステナブルアクションの推進の中で、うまくいった点や苦労した点などがあれば教えてください。

松田:先ほど触れましたが、宣言の案の中には見送ったものも10個以上あります。役職員にカトラリーセットを配布するというのもそのひとつです。いきなり「今日から全員、マイお箸・カトラリーセットを使うように」と周知しても、給湯室でお箸を洗う必要もあり、SDGs初心者にはハードルが高いですよね。見送ったアイデアは、数年かけて社内でサステナビリティの意識が根付いた段階で取り組む施策として、温存することとしました。

遠藤:そのおかげか、役職員からもそれほど大きな反発はなかったですね。むしろ関心を持ってくれることが多かったです。

「10の宣言」にあるエコバッグを製作する際は、せっかくの機会なので、投資顧問独自で作成した「循環の図」のシンボルマークをプリントしようという事になり、いくつかのデザイン候補を出し社員に選んでもらいました。大きさは出社時のランチで使えるよう、お弁当やコンビニで買ったものが入るくらいの小さめサイズにしました。使いやすさを重視したことで、沢山の役職員が活用しています。

役職員に配布したエコバッグの画像
役職員に配布したエコバッグ

小木:「循環の図」はエコバッグだけでなく、オフィスの掲示物やスイッチの横などいたるところにさりげなく貼ってあるんですよね(笑)お客様の目にも触れるので、聞かれた役職員が説明することもあります。様々な場所に循環の図を貼ることでお客様への広報と役職員への意識づけを兼ねることができると考えています。

サステナビリティ方針の概念図

役職員からのフィードバックを受けてどんどん改善を重ねる

―役職員の方々がサステナビリティを「自分ごと」化するために行っている取り組みや、取り組みやすくなる仕組み・工夫について教えてください。

松田:役職員が興味を持ってくれるように、SDGsに関するクイズを社内配信することもしています。「10の宣言」に関するものだけでなく、地球規模のクイズも織り交ぜることで、みんなが「どうしてサステナブルなアクションに取り組むのか」を考えるきっかけになればと思っています。

社内に配信したSDGsにまつわるクイズの画像
社内に配信したSDGsにまつわるクイズ

また、何事もそうですが、PDCAを回すことも大事です。取り組み開始から半年が経過した本年9月に「Check」と「Action」を行うべく、全役職員170名余りに「6か月点検」と称したアンケート調査をしました。

具体的には「10の宣言をよりよくする」と「11番目の宣言」を考えてもらったのですが、60件近い意見が寄せられ、検討の結果、新たに4つの取り組みを追加しました。

役職員に募り、新たに追加した4つの取り組みの画像
役職員に募り、新たに追加した4つの取り組み

小木:「わかりやすさ」「面白さ」もキーワードですが、仕掛けとして「正義感」に訴えかけるような方法もあるかもしれませんね。外部に対してサステナビリティについて発信をし始めれば、「お客様に説明できるようにならなければ」とか「偽りがないようにしっかりと取り組んでいかねば」というマインドになりやすいと感じます。そういった工夫も活動を続けるために取り入れてみてもいいかもしれません。

“みんな”で築くサステナブルな未来

―今後もサステナブルなアクションに取り組んでいくにあたって、意気込みなどがあればお聞かせください。

遠藤:役職員の皆さんにサステナビリティを自分ごととして捉えてもらうことが役割かなと思っているので、サステナビリティという大きなテーマと役職員との橋渡し役になれたらいいなと考えています。そのためにも、身近なことに置き換える等、なるべく親しみやすい内容でこれからも発信していきたいと考えています。

松田:役職員全員が当たり前のことを地道に実直に続ける、これに尽きるかなと思います。この取り組みを始めるにあたり、同業他社やサステナビリティを掲げている企業のホームページを見てみましたがオフィス内の活動に触れているものはほとんどなく、ChatGPTにアイデアを求めてもごく普通の回答しか得られませんでした(笑)。オフィスでできるSDGsに奇策・大技はないんです。そして、脱落者を出さないというのも重要なことだと考えていて、「誰も置いていかない。全員連れていくんだ」という気概で日々取り組んでいます。

今は当たり前のことしかやれていませんが、これを皮切りに役職員のみんなが意識を高めていければ、どんどん新しいことにチャレンジできると思っています。ご紹介した社内アンケートでも多くの意見が寄せられ、社内にSDGsが浸透し始めている手ごたえを感じています。温存している施策がお披露目できる日も近いと確信しています。

小木:今回の取り組みは投資顧問社の取り組みではありますが、グループ内の他社にも波及したりお互いに連携したりして、一緒にサステナブルなアクションに取り組んでいけるとなお良いのではないかと考えています。お互いに、良いと思ったものを積極的に取り入れていく。こんな雰囲気が生まれれば嬉しいですね。

一條:「みんなでやっていく」ことが何よりも大切じゃないかなと思っています。サステナビリティは野村不動産グループ全体、そしてテナントさんや投資家さんも含めた全員が同じ方向を向いていなければなりません。小さなアクションから始めながらも、我々に関わってくださる方々とその必要性を共有しながら、少しずつ一人ひとりが事業の中でもサステナビリティの観点が当たり前になっていくといいなと考えています。

一條さん(左)、小木さん(中央)、松田さん(右)の画像