野村不動産・住宅部門が目指す、「いつのまにか、いい未来。」とは?

右から、野村不動産株式会社 住宅事業本部 商品戦略部の村上静枝さん、清田正道さん、吉田安広さん、小林翔さん

「みんなで、つなぐ!」編集部では、サステナビリティに取り組む野村不動産グループの社員へのインタビューを実施しています。

今回は、マンションブランド「プラウド」を手がけ、住宅領域でサステナビリティへの取り組みを行ってきた、野村不動産株式会社・住宅事業本部商品戦略部のメンバーを取材。 実は20年以上前から行ってきたという環境への取り組みや、「いつのまにか、いい未来。」というキャッチコピーに込めた想いなどについてお話を聞いてきました!

野村不動産・住宅部門が掲げる「いつのまにか、いい未来。」って?

環境への取り組みはサステナビリティといわれる前からとお伺いしていますが、これまでの歩みとこれからの方向性について教えてください。

村上:住宅部門では2000年頃から環境関連の取り組みをスタートさせました。当時はNOAHTEC(ノアテック:Nomura advanced housing technology)という商品開発理念のもと、メンテナンスと将来的な間取り変更を可能としたプラン「野村スケルトン・インフィル(NSI)」を計画に取り入れ、「マルチファンクションシャフト(MFS)」を配置しました。

その後2009年からは、プラウドエコビジョン「へらす」「つくる」「いかす」をテーマに、省エネ実現のため「enecoQ(エネコック)」のシステムやパッシブデザイン(※)、LEDの照明や節水機能が備わった水栓や便器の導入など、今でこそ当たり前ですが、当時は先進的な取り組み・商品として積極的に行ってきました。

これまでの経験や考え方を活かし、これからは当社グループのサステナビリティポリシー「Earth Pride 地球を、つなぐ」の実現に向け、住宅部門としてさまざまな取り組みにチャレンジしていきたいと考えています。

一方で、これらのサステナビリティに関する実績をただ並べても、お客様とっては重要性が分かりづらいのではないかという課題があります。取り組んでいることや商品の良さを実生活のなかで体感できるのはどうしてもご入居後になってしまうため、ご契約時点でその価値をしっかりとお客様視点でお伝えすることが必要です。時代の変化や社会の動きに適応しながら、サステナブルで豊かな暮らしへの提案を常に考えてまいります。

商品戦略部長の村上さん

※パッシブデザイン=太陽の光や熱、風といった自然エネルギーを効率良く活かして、快適な空間づくりを目指した設計

ー住宅部門が目指すサステナビリティ「いつのまにか、いい未来。」とは?

小林:私たちが提供する住まいにおいて、「サステナビリティへの取り組みが、お客様の暮らしをよくしていくことにつながる」ということを実感していただくためのコミュニケーションを考えていく中でたどり着いたのが「いつのまにか、いい未来。」というキャッチコピーです。

キャッチコピーの策定プロセスを担当した小林さん

サステナビリティはどうしても縁遠く、自分ごと化しにくいため、「サステナブルだから、エコだから」ということが購入動機となるお客様はまだまだ少ないのが実情です。お客様には無理せず快適に暮らしていただきながら、いつのまにか地球環境にも良いことができている、楽しみながら未来に良いことに取り組める、ということが伝わるようなキャッチコピーを採用しました。

また、このキャッチコピーの元、よりイメージが湧くように具体例などを載せた営業ツールをお客様に訴求しています。

住まいのサステナビリティってどんなこと?

ー「いつのまにか、いい未来。」の取り組みの中で、国産の木材の活用があります。なぜ国産の木材に注力しているのか教えてください。

清田:一般的に、マンションで使用する木材は海外から輸入されるケースが多いですが、日本の森林、特に針葉樹はもっと活用されるべき状況にあるんです。国内の多くの針葉樹は樹齢を重ね伐採適齢期にあり、成長過程の若い木と比べるとCO2吸収量が低下しつつあります。それを放置しておくと木々が生い茂ったまま日が差さず、他の若い木の成長を妨げる要因にもなります。

そのため、伐採適齢期の木を切って建材として積極利用を促し、新しい木を植え、育て、また使うという「森林サイクル」を循環させていくことが必要です。当社グループでは、東京都奥多摩町に保有している「つなぐ森」の木材も含め、国産木材の活用を進めています。

住宅での木材の活用を手がける清田さん

法的要件の関係からマンション全てを木材にすることは難しいのですが、住居棟から独立した共用棟では構造をはじめ、床材、壁材まですべてを木造にするなど、できる部分から取り組んでいます。共用棟にとどまらず、プラウド参宮橋では、建物全体で約 80㎥の国産木材を使用し、当社として過去最大の木材使用量となっています。集中力を高める、リラックスできるといった木の効用があると言われ、思わず長居したくなるような空間づくりを目指しています。

「プラウドシティ伊丹」の木造共用棟(上)、各住戸の軒裏に国産ヒノキ材をあしらった「プラウド参宮橋」(下)

ー時間が経つと木材が傷んでいくこともあると思いますが、どのような工夫をしていますか?

清田:雨や風にあたる部分はどうしても傷みやすいので、庇(ひさし)の奥行を深く出しているほか、特に雨があたる部分はメンテナンスの頻度を増やすなどしています。劣化は防がなければなりませんが、時間が経つことで少しずつ木材の風合いが変わる様子はお客様に楽しんでいただきたいと思っています。

また、木造共用棟の内装に関しても、長期的な使用を前提としているため、細かな仕切りを設けず、ライフスタイルや住民の方のニーズに沿ってフレキシブルに使い方を変えられるようなデザインにしています。

ー続いて、マンションにおけるEV充電設備についてお聞きします。プラウドシリーズ全物件で「EV充電設備」設置率を原則3割とすることを掲げていますが、海外と比較するとEVの普及率が高いとはいえない中で、マンションにEV充電設備を設置することになった経緯について教えてください。

吉田:今後EVの普及率がどんどん高まっていくと予想されるため、EV充電設備の設置を決めました。2050年までのカーボンニュートラル達成を目指す上で、国内でのEV車の普及が重要な取り組みとして位置づけられており、「2035年までに乗用車新車販売で電動車100%」という具体的な目標が掲げられています。 また、EV車の普及目標の一環として充電設備の設置も並行して進めることが急務となっており、政府は2030年までに15万基の充電インフラ設置を目標に定めています。

マンションでのEV充電設備の導入を進めてきた吉田さん

マンション建設工事完了後に(特に機械式駐車場に)EV充電設備を後から導入することは非常に難しいんです。そのため、常に10年後の傾向を予測して建設計画を立てる必要があり、プラウドシリーズではEV充電設備の設置率を原則3割とする目標を定めました。

「暮らしをよくする」と「サステナブル」が重なる場所を目指して

ーサステナビリティの取り組みを推進するにあたり、同じ職場で働く社員に理解を得ていくことで、より多くのお客様へ届けることができると思いますが、社内ではどのような取り組みをされているのでしょうか。

小林:取り組みを推進するためには、住まいづくりを担当する事業推進部、そしてお客様との接点が多い営業等、社員の方々に腹落ちしてもらうことが不可欠だと思っています。そのために、支社・支店も全て回り対面での研修を行ったり、お客様からのフィードバックを共有したりするようにしています。

例えば、マンションの取り組みの中でどの項目を一番評価しているか、というご来場者様に向けたアンケートがあり、2年前のある物件では、ZEH水準(※)に関する評価は10項目中8番目でしたが、直近完売した物件の評価ではZEH水準が最も高い評価になりました。このような情報を提供することで、サステナビリティの重要性を一方的に押し付けるのではなく、お客様のニーズを理解しそれに照らし合わせた設計や対話する際のヒントとなるように、部署の垣根を超えて連携していくことが重要です。

私の課がなくても現場で楽しみながらサステナを自走できる部門・組織になることが私の短期的なビジョンであり、今の仕事・ビジネスの力を通じて将来、私の子供たち、ひいては孫の世代もすこやかに暮らせる世界が続くことが長期的なビジョンです。

※ZEH水準=ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス。“高断熱性能”と“高効率の設備”を用いて、エネルギーをできるだけ使用しない住まいのこと。魔法瓶のように保冷・保温効果が高いため夏は涼しく冬は暖かい。

ー最後に、サステナビリティに取り組む意義や、醍醐味をお話いただけますでしょうか。

村上:私たちも悩みながら一歩ずつサステナビリティに取り組んでいる状況です。20年ほど前に先進的に導入したLEDが、いまでは当たり前になっているように、今その価値やよさがなかなか伝わらなかったとしても、10年後には当たり前になっているかもしれません。そんな、「当たり前」や「よさ」が変わっていくことを見越して、試行錯誤しながらチャレンジしていくことで、「いつのまにか、いい未来。」を多くのお客様に届けたいと考えていますし、野村不動産グループ一丸となってサステナビリティポリシーの実現を目指していければと思います。

取材に協力してくれた、野村不動産・住宅部門の皆さん